Ⅹ 捨てられた子供の涙 あの日、リーシュコードのドアを開けた玲子をまず迎えたのは、 飴色の木の床を覆いつくす引き千切られた漫画の本だった。 そしてその真ん中で、冬だというのに寝袋にも入らずに、 栄治が服のまま大の字になって大いびきをかいている。 「玲子、水! いや、まずトイレのドア開けてくれ」 栄治に駆け寄り、その上に屈み込んだ誠は、 ベルトとジーンズのボタンを緩めながら大声で言った。