「あれぐらいで酔うわけないだろ? 限界なんて嘘だよ。
……先輩、俺が速攻でリーシュコード辞めたのも、先輩が急に長野に行ったのも、
鉄平さんが俺の純情に気ぃ使ってくれたからだってのは、気づいてた?」
「なにそれ?!」
もたれていたソファーから身を起こした玲子は、
そうつぶやくと、思わず栄治をまじまじと見つめる。
「俺が鉄平さんに頼んだんだ。
できるだけ早く先輩と誠さんを結婚させて、俺を遠くにやってくださいって。
意地も恥も全部捨てて、ぼろぼろ泣きながらね。
……先輩、本当に、少しも気づいてなかった?
あんたを好きじゃなかったら、どうして俺、
あの日あんなに荒れてたと思う?」
そのとき栄治は、それまで伏せていた目を開けて、
あの猛る眼差しで玲子を見つめた。