次の瞬間玲子は、いつも壁の向こうと階下から競うように聞こえてくる、
鉄平と栄治のいびきを探して無意識に耳をすましていた。
だけど安普請の小さな家は、今日に限ってしんと静まり返っている。
鉄平は、伯父の見舞いのために長野へと旅立ったので、
今夜家にいるのはめずらしく玲子だけだ。
栄治は、玲子と2人で一晩過ごすのも気を使うと思ったのか、
いつの間にか鉄平から寝袋を借りて、リーシュコードに泊り込む手はずを整えていた。
玲子は、後片付けを終えた栄治が、
寝袋やカンテラ、山ほどの漫画やおやつまでもを床に広げて、
今夜は室内キャンプだとはしゃいでいた姿をため息と共に思い出す。