Ⅷ オフショアの風を聞いた夜



 誠、誠は?



 悪夢から目覚めた玲子は、ベッドに身を起こすと、

ブルーのボトルの欠片と共に自分の腕の中に散ったはずの小さな誠を探した。



そして暗い部屋を見回しているうちに、

柔らかに体を包み込むお気に入りの毛布と羽根布団の感触に気付く。



「……嫌な夢」



 やがて寝汗と涙をぬぐいながら、玲子は、吐き捨てるようにそう言った。



 夢の中の砂漠のようなリーシュコードを、

誠が去った後の世界を思い出し、背筋を貫く悪寒に全身をぞっと震わせる。