すっかり桜の花も散り、青々とした葉が木を覆い尽くす頃、学校を終えた咲はいつもと反対方向に足を進めた。もうそれは意気揚々と。
『尊に会いに行くんだ。』
ただその思いだけで黙々と歩いた。
途中、疲れては石段のところで休憩しながら、また立ち上がってはズンズン歩く。
汗の粒が額にも背中にも流れていくのがわかる。
すれ違う人が咲を振り返って見ていく。
ランドセルを背負った小さな女の子が一人で歩いているのだから。
しかもこの辺りは車の往来が激しいために通学路にはなっていない。
年配のおばさんが、「どうしたの、一人で?ここは危ないよ。」と声をかけた。