「ああ、そうだ。
お前はいちいち自分の気持ちや想いを全て相手に伝えるのか?
相手を傷つけるようなことは言ったりしないだろ?
博貴さんは博貴さんの考えがあって言わないんだ。
咲が詮索する必要はない。
……もっと頼れよ。博貴さんにも、俺にも。
一人で解決しようとするな。
俺たち夫婦だろ。」
尊の腕が伸びてきて抱き締められた。
優しく触れてそっと力を入れていく。
本当に赤ちゃんを抱くようにふんわりと、でもしっかりと受け止める抱き方だった。
こんな風に抱かれたのは初めてだ。
心地いい…。
尊の胸に頭を預けた。
「…咲。」
呼ぶと同時に顎をクイッと上げられて、尊と視線がぶつかる。
尊の顔が近づいて唇が触れた。
こんなに優しいキスをされたのはいつだったろう。
長い間忘れていたように思う。
尊の溢れる想いが伝わってくる。
私の全てを受け止めて、良いとこも悪いとこも分かった上でそれでも尚、私を選んでくれる。