「それも俺にとっては大事な思い出の一つなんだ。関わりは少なかったけど、その分濃密で普通の父娘より仲はいいと思うよ。咲を想う気持ちは誰にも負けない。」

お父さん…

「これからのこと、尊くんとよく相談するんだ。俺は大丈夫だから気にするな。」

黙って頷いた。



それからは尊との約束通り結婚式を挙げるべく、式場の予約を入れたり、新居探しにと忙しい日々に奔走した。

式は家族だけで披露宴もしないことにした。
その代わり友だちを呼んでのお披露目を、佐古田先輩夫婦が開いてくれることになった。

結婚式まではお父さんと一緒に暮らし、式後は天宮の家と博貴の家のちょうど中間辺りに、マンションを借りることができ、二人で住むことにした。

忙しさですっかり忘れていたけれど、そういえば尊は本格的なトレーニングをしているようには見えない。
理由を問い質したら言いにくそうにしぶしぶ答えた。