博貴はすごくホッとした様子で、何度も何度も「…よかった」と繰り返した。

でも咲の心は晴れない。
せっかく二人の生活にも慣れ、父娘らしくなったというのに、また博貴を一人にしてしまう。
思い悩んでいた。

そんな咲の気持ちを博貴に図星さされた。

「娘が嫁いで今までの生活から離れるのはよくあることだ。たまたま咲は俺との生活が短かっただけで、そんなこと気にすることはない。
その分、充分に楽しんだよ。
たくさん思い出もできたし、咲の良いとこも悪いとこも全部知ることができた。」

「…良いとこ…てどこ?」

「思いやりがあって優しい。一所懸命で頑張り屋さんだ。」

「…じゃあ、悪いとこは?」

「うーん、怒んないか?」

「……う、多分。」

「……不器用…」

「…じ、自覚してるもん!」

そっぽを向いてプウッと膨れた。

「ほらみろ。やっぱり怒った。」

「怒ってないってば!」

更に膨れた。