ここでお母さんのことを想っていっぱい泣いた。

必ず傍にいたのは尊。
いつの間にか傍に来て、何も言わず泣かせてくれた。

優しい鼓動もドックンドックンという激しい鼓動も覚えてる。
温かい背中、マメだらけの手。
全部私の…私だけしか知らない尊だ。
なのに今、私はその尊から離れて生活してるのはなぜ?

お父さんとの生活は楽しいし、嬉しい。安心もする。
でもずっとお父さんと暮らす訳じゃない。
いつかは結婚して離れなきゃいけない……結婚?
誰と?

そりゃ、尊とできればいいけどプロポーズなんて……
あれ。
されたような気がする。
夢…だっけ?

一番大事なことなのにはっきりしない。

あ~あ、誰か教えて欲しい。
私は大切な何かを思い出せないよ。



ぶらぶらと歩きながら商店街に向かった。

電器店の前ではテレビが点いていて、画面の中ではハプニング集なるものがやっていた。