「今回の記憶障害は、精神的なストレスからくるものも影響している。
貴方は実の父親なんですよね?
本当は彼女の身体は自力で歩ける筈なんです。
でも歩けない、というより歩こうとしない。
本人は無意識なんですけどね。
今まで養父母と暮らしてきて、今回のことで貴方と一緒に過ごす時間ができた。
退院したら元の家に戻るんですか?
離れていた分、甘えたいんじゃないですかね。
憶測でしかないですが。
できれば退院したらしばらくご一緒に住まれたらいかがですか?
きっと安心して記憶障害もなくなっていくと思いますよ。
あー、溜まった血液を散らす薬は出しておきますから。」
担当医師は一人でベラベラと喋ってその部屋を後にした。
ストレス……
小さい頃に受けた心の傷が、今頃出てくるなんて。
否、今出たのはきっかけに過ぎない。
おそらく雪乃が亡くなった時からずっと抱えてきたんだろう。
これは尊くんでもどうにもならなかったか。
それならば、親子と証明された時に一緒に暮らしたいと言えばよかった。