少しずつ瞼を開けて周りを見れるようになってきた。
薄目を開けて、ゆっくりと瞳を動かした。

ぼやけてよく見えないけど、白い壁と幾つかの機械と身体から延びる幾本かの細い管が分かった。

何があった?
やたらと重い身体は腕一本動かすことができない。動くのは瞳だけ。

機械から聞こえる規則正しい音は、状態が安定している証拠。

ふと手を握られているのに気づいた。

はっきり見えない。
誰?

するとその人は独り言のように呼んだ。

「…咲、気分はどう?今日も寒いよ。外は雪がチラチラしてる。でもここは暖かい。
……咲の手も温かい。いつもこの季節は冷たい手をしてるのに。
ちゃんと血が通ってる。
生きてる証拠だ。
大きな怪我で大変だったけど命は助かったよ。
最初はどうなることかとヒヤヒヤしてた。
咲がいなくなったらどうしようって、夜も眠れなかった。
今はこうして咲が目を覚ますのを待ってるんだ。」