身体は大したことはない。
でも頭を打ったために検査入院することになったんだ。
母ちゃんが血相を変えて飛び込んできた。
俺の様子にほっとしたのかドスンと椅子に腰掛けると、何度も何度も「よかった」と繰り返す。
ハンカチで目を押さえていた。
「…咲は?」
「……大丈夫よ。心配はいらない。」
微笑みながら言うけれど…一瞬、表情が固くなったのを見逃さなかった。
「咲はどこにいる?」
「…尊。咲ちゃんに心配かけちゃダメでしょう。尊のことはちゃんと伝えるから。今は安静に…」
「どこにいるか訊いてるんだ。」
母ちゃんのオブラートでくるんだ物言いはイラつかせる。言い終わらないうちに被せるように問い質した。
「……」
「…俺たち夫婦なんだ。俺が咲の所在を知らないなんておかしいだろ?」
母ちゃんは仕方なくといった感じで重い口を開いた。