「何バカなこと言ってる。俺は咲のことそんな風に考えたことない。お前は『彼女』じゃない。『妻』だろ?もっと堂々としてろ。」
そうだ。私は『奥さん』だった。じゃあ、私がどんな格好でも大丈夫なの?
「私がジャージ姿で素っぴんで髪がボサボサでも、一緒に歩いてくれるの?」
「…それ家の中と一緒じゃん。身だしなみとしてどうなんだって話だろ。」
「やっぱり気にしてるじゃない。だからいっぱい悩んで準備してるのに…」
「あー、わかったわかった。咲のオシャレは俺のためだったんだ。はいはい。」
「何!?その言い方。バカにしてるでしょ。」
「してないって。でもそれで約束に遅れちゃ意味ないだろ?」
うっ…痛いとこ突かれた。
尊の言葉に大人しくならざるを得なかった。
「駅降りたら走るぞ。間に合うかな。」
時間を確認すると難しい顔をした。