施設には咲と同じぐらいの年の子がすでに三人いた。男の子が二人と女の子が一人。
みんな仲が良いのかと思いきや、遊ぶのは一人一人バラバラで違う事をやってる。
一人が積木で遊んでいると一人が蹴散らしにかかる。すると喧嘩が始まって、おままごとをしていた女の子がわあわあ泣き出した。
ここの子たちは喧嘩をしてなくてもニコリともせず、先生の後をついて回ったり、指吸いをしてじっと目で追ってたりする。
今までの保育所での様子とあまりにも違い、なかなか馴染めなかった。
私は毎日先生に、「タケルに会いたい。連れてって?」と頼んだけれど、「じゃあ、来てくれるように言っとくね。」と言うだけで取り合ってはくれなかった。だっておばちゃんも尊も一度も来なかったから。
いつしか私は『家に帰るんだ』という気持ちが強くなって、日に日に『尊のとこに戻る』という決意が固まっていった。
小学生になったら一人で学校へ行くんだもん。尊のとこにだって行けるよ、きっと。