「最初から尊の手だったんだ。
この手に安心すること多かった。
尊がいつも守ってくれてたんだね。ありがと。」
「何か…改まって言われると、恥ずかしいな。」
「そう?
私ね、尊とこんな風に過ごせる時が来るなんて思ってなかった。だってね…」
尊の腕に掴まって肩にもたれかけた。
「こんなことしても誰も何も言わない。幸せ…。」
「咲、枕持ってこい。今日から一緒に寝よ。」
「うん。」
「少し狭いけど我慢しろ。今度の休みにベッド買いに行こ。それから役所へ行って…。」
「…夢なら覚めなきゃいい。」
「夢?現実だよ。頬っぺたつねってみろよ。―――デデデ!何で俺のつねんだよ!?自分のだろ、普通は!」
「だって自分でやって痛かったら嫌だもん。」
「お前~…。」
尊とプロレスになった。
結婚の決まったその日に小競り合いなんて…。
リビングでは暴れる二人におばちゃんは天井を見上げ、呆れてため息を吐いていた。