〈天宮家side〉

「紗智、どうしたんだ。彼に失礼じゃないか。」

紗智は背中を向けたまま項垂れてびくともしない。

「聞いてるのか!?」

少しだけ声を荒げると小さく声を発した。

「…父ちゃんは……平気?」

「何が?」

「咲ちゃんが…北条さんの娘だとわかって……平気?」

「どういう意味だ?」

「私は…今更名乗り出なくたっていいのに…て思ってた。今まで娘だと思って育ててきたんだよ?
それを『本当の父親です』て名乗りを挙げられて、私たちは『咲ちゃん』と呼んでいるのに『咲』と呼び捨てにして急に父親風を吹かして…何様のつもり!?
いくら引き離すつもりはないと言っても、咲ちゃんが行くと言えば、この家からいなくなることだってあるんだよ?
そしたら…そしたら…私たちはどうすればいいの!?」

「紗智…。」

すすり泣く紗智の肩を抱いた。