本当にその先輩が…? ううん。そんなのわかんない。ただの悪戯かもしれない。現にあれ以降何もないし。
「何でもない。」
ニコッとして友美に返事をした。そこへ尊がやって来た。
「おい、咲。傘二本ない?」
「二本?あるわけないよ。何で…まさか傘持って来てないの?朝から降ってたじゃない。」
「…さっき振り回してて、骨が折れた。」
「バッカじゃないの!?そんなことするからでしょ。濡れて帰って、おばちゃんに怒られたらいいじゃん。」
「そんなこと言うなよぉ。かあちゃん怒ると手がつけらんねえの知ってんだろ?今日、一緒に帰ろ。な?な?」
両手を合わせてお願いポーズをする尊に、「仕方ないなあ。」と口を尖らせた。
尊が去った後、友美が言った。
「尊くん、女の子に自分から話しかけるの咲だけだよね。普段クールなのに全然違う。」
「んー、そう?」
友美の前では惚けた振りをしたけど、本当は知ってる。
私は特別なんだと思うと、優越感を感じることもある。
でも逆に、女だと思われてないかも…て思うこともあって、わからない。
尊の気持ちを知りたいような、知りたくないような。