「落ち着いてよ、友美。そんなに自分を責めないで。…あのね、理由があるの。聞いてくれる?」
「理由?」
「うん。あの日はね、特別なの。
保育園最後の日だからあの日にあったことを大切にしたいの。」
「…どうして来なくなったのか訊いてもいい?」
咲は伏し目がちに頷くと口を開いた。
「お母さんが亡くなったから。」
「…えっ。」
「私が尊の家に世話になってるのはお母さんがいないから。
お父さんは生まれる前からいないの。
…どういう訳か保育園での記憶は殆どないのに、あの日のことは鮮明に覚えてる。
きっと何もかもがお母さんの思い出に繋がってるからじゃないかな。
だから友美は意地悪でやったことじゃなくて、尊との思い出を守ってくれたんだと思う。」
「こめん、咲。ごめん…ね。」
友美は頭を下げて泣いてるようだった。