友美は尊と私をどんな気持ちで見てきたんだろう。
好きな人が自分以外の女の子に優しく接するのを見て、辛くない筈がない。

「友美、ごめんね。嫌な思いしたよね。なのに私の想いが叶うように応援までしてくれて…。」

「あー、待って。まだ謝るのは早いよ。最後まで聞いて。」

友美は話を続ける。

「聖司くんはね、咲のことが好きだったんだよ。」

「…え。佐古田先輩が?本当に?」

「うん。ピアノ…弾いたでしょ。あれ、聖司くんの精一杯の気持ちだったんだよ。」

今の先輩から想像できない。卒業の時は友美ととっても仲良くて、羨ましいぐらいだったのに。

「ずっと天宮くんのこと好きだったのに、ピアノを聴いて嬉しそうにしてる咲を羨ましく思った。私にも弾いて欲しいと思った。
その時気がついたの。いつの間にか好きな人が聖司くんになってたことを。
もしかしたら咲を好きな天宮くんに憧れてたのかもね。
だから中学で再会した頃は“尊くん”て呼んでたのを“天宮くん”にすんなり変えることができたのかもしれない。」