「ボサボサじゃん。ちょっとは整えろよ。」
尊の優しい指使いが直に伝わってくる。
こんなことするのは私にだけだよね?
家族だから?それとも…。
ふいにさっきの光景が甦ったせいで、一度上げた瞳をまた伏せた。
「制服のこと、気にしてんのか?大丈夫だって。また何かあったら俺が助けてやっから。行こ。」
咲の襟元に腕を回してぐいぐいと引っ張って行く。
違うよ尊。
知らない子と楽しそうに話してる尊が嫌だったんだよ。
他の女の子と仲良くしないで。
私は尊にとって妹という存在でしかないの?
家族なのに、こんな気持ちになっちゃいけないの?
首に回された腕は、昔のように華奢な細いものではない。
腕相撲をすると、どっこいどっこいだった。でも、今じゃきっと負けるんだろう。
尊が男友達にするように回した腕は、咲にとって心臓バクバクで、これ以上触れていると、どうにかなってしまいそうだった。