「どうせ手ばっかり気にして、試合なんかちっとも見てなかったんだろ?あ~あ、せっかく頑張ったのに。ちゃんと応援ぐらいしろよな。」
尊は口を尖らせて拗ねた顔をする。
「ごっ…ごめん!ごめんなさい。でも応援はちゃんとしてたんだよ?心の中で。」
「…そんなの聞こえるわけねえだろ。この次はちゃんとしろよ。」
立ちながらラケットで、もう一度ぼんっと軽く頭を叩いてその場を去った。
……あれ、今の試合…勝ったの?負けたの?
『この次はちゃんとしろよ』
ということは、勝ったんだよね?
今日は怪我を心配しなくても大丈夫なのかもしれない。
尊の様子に少し安心して次の試合を観戦することにした。
「お疲れ様!」
「………。」
……怖っ!
ブスッとした顔でろくに返事を返してくれない。
尊は準決勝まで進み、敗れて三位となった。