更衣室を出ると尊の姿はなくて、正門へ向かった。

門扉にもたれて待ってる姿が見える。

「たけ…。」

側に誰かいる。尊の陰になってよくわからない。

…女の子?尊は優しい笑みを浮かべて、楽しそうに話してる。

あんなに優しい顔するんだ。

二人の雰囲気に声をかけられなくて、足が止まったまま動けなくなった。

しばらくすると会話が途切れ、尊の愚痴が聞こえた。

「おっせーな、まだかよ?」

言いながら振り向いた尊は、突っ立ったままの咲に目を止めた。

「何分待たせんだよ。早く来いよ。」

「じゃ、またね。」

「あ、はい。さよなら。」

やっと離れてくれた。

少しほっとして、でも俯いたまま言葉は出ないし、足も動かない。

尊は咲の前に立つとポンッと頭に手を置いて、手櫛で髪をすいた。