雪乃がこの世にいないと知って、何度傍に行きたいと思ったことだろう。
でも忘れ形見の咲を見てたら、いつの間にかそんなこと考えなくなっていた。
どんどん…どんどん咲への気持ちが大きくなって、守らなくてはいけないと思うようになった。
咲の好きな人が尊くんならその想いを大切にしてほしい。
俺は…雪乃が生きている間に想いを貫くことができなかったから。
きっとこれからも彼女以外に好きになれる人はいないだろう。
明日…咲に連絡しよう。
咲は何て言うだろう。
検査を受けてくれるだろうか。
……俺の方が不安でいっぱいだ。
咲を失うのが怖い。
……雪乃…。
俺に勇気をくれよ。
このまま逃げ出したい気持ちを追い払ってくれ。
何がこんなに不安に思うのかわからない。
……否、もしかしたら心の中では薄々わかってるのかもしれない。
ただ認めたくないだけ……。
店を出て、ふらふらと思いつくまま歩いていると銀杏並木に来ていた。