「…無理だろ。」

「いや、できれば彼女のお墓参りとかしたいけど無理なら諦めるし、来年春になったらどこか遠いとこでも行って……」

「…嘘だよ。恨んでなんかいない。」

「え?だって俺は…」

「彼女がいなくなったのは別の理由だと思う。」

「………。」

「確かに透に付きまとわれて困ってたよ。でもそんなことで出ていくような雪乃じゃない。」

「じゃあ、どんな理由があるって言うんだ?」

「これから調べたいことがある。その結果次第だな。」

「調べる?何を。」

「…咲の父親。」

「……何かあるのか?一文字と雪乃さん、関係あんの?」

「雪乃の名字知ってるか?」

「いや、ずっと雪乃さんて呼んでたから…え?あ…まさか…!」

「………。」

「一文字が…雪乃さんの…。」

「…結果が出たら連絡する。」

俺はそのまま席を立ち、店を出た。
体に纏(マト)っていた店内のひんやりとした空気が、一気に湿気を含んだ不快な空気に変わる。