「博貴は私のことどう思ってるの?お母さんの代わり程度にしか思ってない?」

「………。」

まだ中学生の俺には何て答えればいいのかわからなかった。

「うふっ。うっそー。いつも苛められてるから仕返しだよーだ。」

べっと舌を出して逃げる雪乃を掴まえて、ふざけたりした。

そんな関係も高校生になると少しずつ変化していく。

透が俺たちの間に割って入ってきた。

よくウチに来ては雪乃に話しかけて、時折強引に会う約束をしたりする。

当然俺は面白くない。不機嫌になる度に雪乃に当たった。

あの頃、雪乃はいつも泣いていたような気がする。

俺が泣かせたようなものだ。
今から思うとあの時にちゃんと気持ちを伝えてれば、泣かすこともなかったのかもしれない。

透の行動は強引で相手に断る隙を与えない。
でもそれを知っていながら黙って見ることしかできなかった自分。

悔しくて、母を貴士に取られた時と同じだ。雪乃まで透に取られたようだった。