「……。」

「大人しい人で誰とも関わりを持とうとしなかった。でも家内と保育所でよく顔を合わせるようになって、子どもたちが仲がいいこともあって、だんだん家族ぐるみの付き合いになったんだ。」

「……。」

「時々、咲を見つめては『まっすぐな髪は好きな人に似てるんだ』とか言ってたよ。」

「……そ…ですか。」

天宮さんはなぜこんな話をする?
雪乃は俺たち家族が嫌いになったんじゃない?
近くに住んでた?
嘘だろ。
水泳を続けるには雪乃が必要だった。心の支えが欲しかった。
………。
雪乃がいなけりゃ何もできないのは、ただの甘えだ。
自立しない俺にしっかり立てと言いたかったのかもしれない。
こんな俺では雪乃は俺の傍にはいられないのは当然だ。

涙が出てきた。

俺は今まで何をしてきた?何年も部屋に籠って仕事には行くものの、家族を恨み、当たり散らして避けてきた。

咲が自分の父親のことを知りたがってるのを知りつつも、雪乃が選んだ相手のことを知りたくないばっかりに避けてきた。