この間、福田くんと付き合ってるなんて噂が流れたのも、今から思うとミッチか福田くんがやったんじゃないかと思う。

中学の時に流れた噂も尊は『放っとけ』と言った。
だから気にしないことにしてるけど、相変わらず福田くんは咲の側をチョロチョロしてる。

今日の大会が終わったらもう一度はっきり言おう。



ミッチは自由形に出場することになっていて、時間が迫るにつれて落ち着かなくなってきた。

客席を見てイライラしてる。

「咲、彼来るの?もう時間なのにちっとも来ないじゃない。」

「え?約束してるの?」

ミッチはあからさまにムッとした顔を咲に向けた。

「彼にアドレスや番号を書いた紙を渡したのに、ちっとも連絡がこないの。何か訊いてない?」

いつの間にそんなの渡したんだろう。ちっとも知らなかった。

あの時、知り合う程度ならいいと言ったのは本当だったんだ。でも私からミッチにそんなこと言える訳がない。

「さあ…何も聞いてないよ。」

ちょうど召集のアナウンスがかかり、痺れを切らしたように下へ降りて行った。