小学校の卒業式。

おばちゃんは涙を滲ませた。

「本当に大きくなったね。二人ともこーんなに小さかったのに。」

親指と人差し指で2cmくらいの間隔を作ると目の前にかざした。

「そんな小さいわけねーじゃん。虫じゃねえんだから。」

プイッと尊は横を向く。

「偉そうにするんじゃないよ。昔は『母ちゃん母ちゃん』てトイレにまでついて来たくせに。」

「知るかよ!そんなの。」

尊は真っ赤になって反論する。

「ほら、いつまでもふくれてないで。お寺に行くよ。ちゃんと報告しなきゃね。」



私たちは卒業式を終えたその足でお寺へ向かった。

お寺の敷地内にある小さなお墓。お墓と言っても大きな部屋の中に幾つもの引き出しのようなものが並んでいて、その中の一つを引っ張り出した。

ここにお母さんが眠ってる。亡くなった時、おじちゃんとおばちゃんが用意してくれた。

お線香に火を点け、手を合わせた。

今日、卒業式だったよ。咲は尊たち家族のお陰で幸せに暮らしてる。だから心配しないでね。お母さんも元気でいてください。

何も返事は聞こえないけれど、お線香の優しい香りが咲をフワリと包み込んだ。