〈尊side〉
あんなのはキスじゃない。
気持ちの通じてない一方的なのなんか…。
ムカついて殴ってやろうと思ったら、咲に呼ばれて…。
すがるような目で見つめられたら、追いかけられなかった。
咄嗟に咲に嘘を吐いた。
あの女、ムカつく!
一体何なんだ。
咲が見てるのを確認しやがった。
触れてないなんて嘘。
避けられなかった。
触れたなんて言ったら、もっと咲は混乱するだろう。
咲の様子にいたたまれなくて、自分の気持ちも抑えられなくて、咲にキスをした。
真っ赤になった唇が痛々しい。
『嫌なことを消すため』と称して、初めて触れた咲はほんの少し肩があがって、でも『目を開けるな』と言うと正直にそのままで…。
俺の気持ちが止まらなかった。
気持ちを伝えた後、また唇を擦られたらどうしようと思った。
でも咲ははにかんだ表情で真っ赤になった。
気持ちが通じたと思った瞬間だった。
抱き締めて何度も唇を奪う。唇以外にもいっぱいキスをした。