博貴は深く大きな息を吐いた。

「咲が家に出入りするようになって随分経つのに、一向に雪乃は来ないし、電話の一つもかかってこない。おそらくそうじゃないかと思っていた。」

「…ごめんなさい。言い出し難くて…。」

「…構わないよ。できればどんな様子だったのか知りたい。話してくれるか?」

………。

ついにこの日が来たのか、という感じだった。

きちんと話ができるのかどうか…。自分がどうなってしまうのか想像できない。
でも心のどこかで話してしまいたい、わかってほしいという気持ちが沸き起こっているのも確か。

「…今まで誰にも話したことないの。」

「…誰にも?」

「おばさんにも、北条さんにも。何があったのか、尊の家族は知ってる。でも言ってないことがあるの。お兄さんにだけ…話すから。」

「…わかった。」