「…チヤホヤなんてされてないし、期待もされてないよ。
尊だって忙しいし、試合もあるの。余計なことで気を使わせたくない…」
「余計なこと?私が頼んだことはそんなに迷惑なんだ。
でもそれはあなたの意見でしょ?勝手に決めつけないで。
彼が言ったのなら信じるけど、それもあなたの口から聞いたんじゃ信用できないわ。
じゃあ、こうしよう。今から家まで連れてってくれる?
彼に会って直接話すわ。いいでしょ。嫌だとは言わないわよねぇ?」
ミッチの強引なやり方にムッとして、言い返したい。
でも大会前に険悪な関係にはなりたくない。
何とか尊に迷惑にならないようにしないと。
「ちゃんと話すから今日は止めて。尊の都合だってあるし…。」
「へぇ、尊くんていうんだ。」
独り言のように呟いた。
「あの…聞いてる?」
名前を知れて嬉しいのか何度も繰り返し言ってる。
「聞いてるわよ。今日は行かない。ちゃんと言っとくのよ。わかった?」
高飛車な言い方に咲は不快感を露にしたけど、ミッチはそんなことどこ吹く風。
あの『紹介して』と言った時のように、言うだけ言うとさっと踵を返して帰って行った。