「退院してからも母は貴士に付きっきりで俺には見向きもしなかった。
そんな時、雪乃がやって来た。今まで身近に若い女の人なんていなかったから、新鮮だったよ。
俺は早く仲良くなりたかった。でも方法がわからない。悪戯をすることで彼女の気を引こうとしたんだ。
彼女も人見知りな面があったようで、子どもの俺にはすぐ馴染んだみたいだった。
いつもちょっかいを出しては怒って追いかけられた。
ふっ……懐かしいな。」
「……」
「母に相手にされない寂しさを雪乃で埋め合わせしようとしたんだ。
俺の心の内を知ってか知らずか…その様子に親はまるで姉弟のようだと言った。
雪乃は何でもできて、俺の中には憧れの気持ちが湧いてきたよ。
貴士には母がいる。だから雪乃は俺のだ、なんて真剣に思った時期もあった。