「私、秋になるとそこへ時々行くんです。そしたら先にあなたがいたり、後から来たり。
横顔しか見たことなくて確信はなかったけど、今わかった。
あそこは特別な場所?」

「そんなことを訊いてどうする?」

「私には特別な場所だから。」

「…お前にとって特別だから、俺も同じだったら嬉しいとでも?それとも何か?自分の特別な場所に俺がいたら邪魔だと言いたいのか?」

突然厳しい口調になって振り向いた博貴は、いつの間にか眼鏡をかけていて、いつもの冷たい態度になっていた。

「もう、出ていけ。」

咲の腕を掴み、ぐいっと引っ張って立たせると、また椅子に座って背を向けたままこちらを振り返ることはなかった。