「……歳は?」
「16です。」
「……どこに住んでる?」
「駅を挟んでここと反対方向です。」
「……いつから?」
「多分、生まれた時から。」
「……お前、兄弟はいるのか?」
「一人っ子です。」
しばらく沈黙が続く。
博貴は立ち上がると壁際にある棚からグラスを取り出し、そこに紫色した液体を注いだ。
グラスを二つ持って戻って来ると、一つを咲に差し出す。
「あ…ありがとう。」
口元までもっていくとワインのような香りがする。
思わず博貴の顔を見た。
クスクスクス…
「心配しなくていい。ただのグレープジュースだ。俺のはワインだけどね。」
博貴の穏やかで優しい笑みは、それまで緊張していた咲の心を解きほぐす。
ゆっくりと口に含むと何とも言えない芳醇な味がした。