「…一文字咲さん。雪乃さんの…。」

「雪乃が見つかったのか!?」

「いや…そうじゃなくて…」

貴士の言葉に繋げるように咲が言った。

「娘の咲です。こんにちは!」

努めて明るく貴士の後ろからひょいと顔を出した。

「今…何と言った?」

「雪乃の娘の咲です。」

「ふっ…ばかばかしい。貴士。今度から客を連れて来るなら雪乃を連れて来い。」

吐き捨てるようにそれだけ言うとドアを閉め、また鍵をかけてしまった。

「ちょ…話ぐらい聞けよ!!」

叫ぶ貴士を制止するように腕を掴むと、静かに首を振った。

「…ごめん。何を言ってもあんな調子で…。」

「ううん。私は平気。突然顔を出した私が悪いの。
でもお兄さんは今も苦しんでるんだね。家族では取り付く島もない程。
何とか家族と話ができればいいんだけど。
これからはお邪魔したらお兄さんにもちゃんと声をかける。
そしたらそれが少しでも突破口になれば…」