「高校の音楽科に超有名なピアニストが来たんだ。たまたま他の用事があってついでに覗いてみただけらしいんだけど。ちょうど音楽祭の後で、学内コンクールの練習をやってて…そこで聖司くんのピアノを聴いたらしくて。その人が帰ってから連絡がきたの。海外で勉強しないかって。」
まるで別世界の話で、ドラマのストーリーを聞いてるようだった。
ぽかーんと口を開けて、友美の話を聞いていたけど、「ちょっと~、聞いてる?」と言われはっとした。
「あんまり凄い話でドラマかと思っちゃった。」
友美は深いため息を吐くと、「ドラマだったらどんなにいいだろう…。」と呟いた。
「先輩にとっちゃチャンスじゃない。友美は応援しないの?」
「そりゃしたいよ!するに決まってる。でも今年なんだよ?8月には向こうへ行っちゃうんだ。いつ帰るかもわかんない。後4ヶ月で気持ちの整理なんかできる訳ない。」