「わざわざありがとね。」
そう言って家に入ろうとすると「あ…ちょっと。」と呼び止められる。
振り向くと、真剣な表情で一歩咲に近づいた。
「あの…俺さ……一文字のこと…。」
キキ―――ッ
すぐ傍で自転車のブレーキ音が鳴り響く。
音の主は…尊だった。
「煩いなあ。自転車の整備ぐらいちゃんとしなさいよ。」
「自転車使う頻度がお前とは違うんだよ。いちいち言われたかないね。」
「何よ。喧嘩売ってんの?」
「売ってんのはお前だろ。」
「だって私は今、福田くんと……あ、福田くんごめん。何だっけ?」
「…いや…いい。また明日。」
「あ…うん。ありがと。」