「私がちょくちょく北条さんちに行ってるのは知ってるよね?去年、初めて家に上がらせてもらった日に、名前のこと訊かれたの。」
一文字の姓を名乗る女性が働いていたこと。
写真を見せられて、それがお母さんだったこと。
お母さんが北条家にとってどんな存在だったのか…全て話した。
尊は驚きの表情のままじっと咲を見つめていた。
「…本当なのか?」
黙って頷いた。
「おばさんは、お母さんが働くことになった経緯を細かく教えてくれて…お母さんに会わせてくれと言ってた。理由も告げずに辞めちゃったから、気になってるって。
でも亡くなったことを伝えると、とても悲しそうだった。家族のように接してたって…。
だから、少しでもお母さんのこと知りたくて、北条さんちに行ってた。」