「折角、久々に出かけるんだ。泣いてちゃつまんないだろ。ほら、急がないと次の回まで間に合わなくなるぞ。」
「…うん。」
優しい声に徐々に涙は止まった。やっと尊から離れると「…おい。」と嫌そうな声がする。見ると尊のジャンパーは涙と鼻水でじっとり濡れていた。
「お前…今日一日俺の召し使い決定な。」
ひいい―――っっ
「俺の後からついて来るのやめろ。」
「はいぃ!」
「服の裾掴むな。」
「はいぃ!」
「手、貸せ。」
「はいぃ!…え?」
尊の機嫌を窺いながら、隣を歩ける雰囲気じゃなくて、後ろをちょこちょことついて行ってた。
歩調が合わなくてはぐれないように、服の裾を掴んだ…と言うよりちょびっと摘まむような感じだったのに、それさえ許してもらえない。