「一文字咲です。福田くんのクラスメートで、彼の入院中に知り合ったんです。」
「まあ、そうだったの。今まで貴士が女の子を連れて来たことなんてなくて。貴士の兄の博貴も全く女っ気がないから…。」
「母さん、そんな話しなくていいだろ。」
「あら、ごめんなさい。調子に乗りすぎたわ。初めての方にお話するようなことじゃなかったわね。」
おばさんは紅茶を口に運んで、お菓子に手を伸ばした。
そのうち、咲さんのお家はどの辺り?とかご家族は?とか訊かれて、当たり障りのない返事を繰り返していると、名字のことを訊かれた。
「一文字さんて珍しいお名前よね?ご両親はどちらのご出身なの?」