手際よくサッサと固定されるヘルメット。

北条さんの手が…顎の辺りに触れる。

う…ドキドキする。

下から覗き込むようにベルトの金具を留める北条さんに、緊張して顔が赤くなる。

「はい、できた。乗って?」

「…はい。」

小さな声で答えた。

…どうやって乗る?
シートの位置が高く足が上がらない。

「クスクス…本当に何も知らないんだな。足はここにかければいいよ。」

何とか跨ぐことはできた。今度は…乗ったはいいけど、どこを掴んだらいいのかわからない。

「しっかり掴んでないと落っこちるよ?」

「あの…どこを掴めば…?」

「クスクス…ここしかないだろ?」

北条さんは咲の腕を掴むと自分の腰に回した。

うわっ…やっぱり…ここ?

「行くよ。」

ゆっくりと走り出したバイクは徐々にスピードを上げていく。

福田くんと歩いて来た道のりはあっという間に駅に近づく。