福田くんを家の前まで送り、もう一度北条さんちの前を通った時だった。

「あれ、咲ちゃん。」

向かいから走ってきた大きなバイク。ちょうど咲の目の前で止まった。

私、ヤンキーの知り合いはいない。何でこの人名前知ってるの?…ナンパだったら逃げなきゃ。

フルフェイスのヘルメットが咲の恐怖心を掻き立てる。ジリジリと後退りをして反対側の家の壁づたいにぴったりと背中を着ける。

咲の怯えた様子に気がついたのか、その人は「俺だよ、俺。」と言う。

もしかして新手のオレオレ詐欺?

不審な顔をしたままじっと睨みつけていると、

「思ったより鈍感なんだな。」

ヘルメットを外したその人は北条さんだった。

「よっ!久し振り。どうしたの、こんなとこで?」

「あ、北条さんかあ。こんにちは。ナンパされたかと思っちゃった。」

「おいおい、俺そんなに怪しい?」

「うん、怪しい。」

ニッと笑って上目遣いでチラリと視線を合わせた。