「今日はありがとね。試合会場まで来るの大変だったでしょう?疲れてない?」
「試合に出た方が疲れるのに俺の心配してくれんの?このくらいどうってことないよ。今まで動かなかった分、体力有り余ってるから。」
「ふふ、毎日退屈?」
「退屈というか…自由に動けないからイライラする。遥…妹に頼み事すると“嫌だ”なんて言って舌出すし、タカさんはバイト三昧だし。せいぜい留守番が関の山。」
「そっかあ。あ、次降りなきゃ。」
電車を降りると、人の流れが納まってからゆっくりとエレベーターに向かう。
改札を出たところで一人で帰ろうとする彼に「送る。」とついて行った。
「いいよ。」
「ううん。送る。」
「いいって。」
「心配だから。」
「行く時も一人だったから大丈夫だって。」
「送る。」
「女の子に送ってもらいたくねえよ。」
「怪我が治ってから言いなさいよね、その台詞。」
「頑固だな。」
「あら、お互い様よ。」