朝、尊のお弁当を作っていると、いつの間に来たのか尊がすぐ横に立っていた。

「わっ!びっくりしたあ。いつ来たの?気づかなかったよ。」

「お前…腕上げたな。」

「え?」

「サンキューな。」

お弁当を手にした尊は笑みを溢した。

「あ、もう行くの?気をつけて。」

「ん。」

「それから…」

「何?」

「イライラしちゃだめだよ?」

「……。」

尊はじっと咲を見つめる。

「どうしたの?」

「俺を落ち着かせるにはどうすればいいか、知ってる?」

「…うん。知ってる。」

「本当に?じゃ、やって。」

手にしたお弁当を置くと咲の方を向いた。

「後ろ向いて?」

言われた通り尊は背中を向けて咲の前に立つ。

尊の腰に手を回し、いつかのように抱きついた。

「こうすれば…いいんだよね?」

咲の手をポンポンと軽く触ると頭をくしゃっと撫でて、

「行ってくる。」

と家を出た。



「さ、私も用意しよ。」

ノートのコピーを持って病院へ向かった。