二人とも黙ったまま何も言葉が出なかった。
その空間を裂くように咲が言った。

「尊の話は?」

「俺の話は、咲が遅くに帰って来て、俺には謝らないと言った日にまで遡るんだ。」

「え?そんなに前なの?」

「うん。あの日先輩と帰ったんだけどさ、先輩は『咲は用事があって先に帰るから、俺に伝えてくれって言って、走って帰った』て言ったんだ。
先輩と咲って面識がないのにおかしいと思ったんだけど、慌ててたからテニス部員だと誰でもいいと思ったんじゃないかって。
その時はあんまり気にも留めてなかった。
その次に友美ちゃんのことだけど、水泳大会の前日、住所を頼りに家まで来たっつったろ。
初めは咲に用事があったらしい。
でもいなかったから俺に話した方が手っ取り早いって言って、色々話してったよ。
先輩に関して色んな噂を聞いてるから気をつけろって。
特に咲は目をつけられてるから、今まで何かされなかったかとか心配してた。
それで今日は新学期からは学校で咲と関わらない方がいいかと思って、その話をしようと思ってた。」