午後の競技が始まる前に顧問がみんなを集めた。
「メドレーの後のリレーだが、予定していた佐古田が左足を痛めて出場できなくなった。
で、予め登録していた選手の変更ができないか確認したんだが、それは無理だということで残念だがリレーは棄権することになった。
でも1、2年生にとってはまだ来年がある。そのためにも今回のリレー、しっかり見ておくように。以上だ。」
顧問の横で椅子に座って項垂れる先輩の姿は、痛々しくて見ていられなかった。
咲のことを一所懸命励ましてくれた先輩に、何かできないかと考えてみたけど、今はきっと何を言っても辛いだけだと思い、そっとしておくことにした。
召集がかかり、先輩の横を通ってプールへ向かおうとしたら、手首を掴まれた。
「先…輩?」
ゆっくりと顔を上げて、柔らかな笑みを浮かべながら、
「俺の分も…頑張って。」
静かに言う先輩の目を見て、「はい!」と力強く答えた。