「…伊折が眠ってから既に一年…それでも毎日のように見舞いに来てくれる仲間がいる、それは何よりも幸せな事だろ」


口端を上げながら話す蒼の言葉につられ頬を緩ませる。


「…それに、兄貴もいるしな」

「……伊折は幸せだね…」


波留の言葉に続き言えば自然と三人とも笑みが溢れる。


「……さて、倉庫戻ろっか」


不思議と今までにない程のすっきりとした気持ちで言えば「ああ」と二人も頷き病室をあとにする。



エスカレーターを降りた時、不意に波留の動きがピタリと止まる。


「……波留?」


急に止まった波留を訝しげに蒼と見るがただ一点を見つめたまま。


「……裕香…」


ぼそりと呟いた波留の視線の先には、一人の女。


「……波留、久しぶり」


ニコリと微笑み駆け寄ってくる女。


「………蓮南、知り合いか?」

女嫌いなのか明らかに嫌そうな顔をする蒼にふるふると首を横にふる。