「……これが私の全部」
話し終われば知っている大雅以外は予想外の内容だったのか未だに動揺したまま。
「………そうだったのか…」
「…何で、伊折を知ってるの?」
一番気になっている事を蒼に聞けば少しの間何かを考えるように黙りこむ。
「…伊折は俺の弟だ…」
「……ッッ…兄弟…?」
予想外の言葉に瞳を揺らがせ目を見開き少し詰まりながら聞けば「あぁ」と言い頷く蒼。
「…母親は違うがな…父親の愛人の子供が伊折だ。…知らされたのは俺が13才の頃、俺の家…鬼崎家は昔からの名家。それを公にするわけにもいかず黙っていたらしい」
「…伊折の兄弟…ッッ…だから」
――…似ていると思ったんだ。
初めて会った時に感じた"懐かしさ"。
その意味が分かったと同時に感じる自分への忌々しさ。
「……ごめんなさい…ッッ」
「………ッッ…蓮南…」
謝ってもどうする事も出来ないのはわかってる…けど、今の私には謝る事しか出来ない。
「……伊折がな、たまに遊んだりした時に口癖みたいに言うんだよ」
――…「俺は親友を何があっても守る」って
それを聞けば伊折との約束をした日を思い出し涙が止め処なく頬を伝う。
「あいつが蓮南の話をする時はいつだって笑顔だった……だから、俺は蓮南を責めないし怒りなんてない。…ただ、伊折の親友に会ってみたかっただけだ」
そう言えば俯いて涙を流す私の頭を優しく撫でながら微笑む蒼。
「…ありがとう…ッッ」
そう言い微笑めば少し驚いたように目を見開いてからまた優しく微笑んだ蒼。