まるで私と克だけが何処か離れた場所にいるように思えた。


未だ肩を震わせ俯く克に苛立ちを感じ一歩進んだ時、辺りに声が響く。


「…ぷっ…はははははっ!!何が可笑しいって?全てだよ、何も知らないお前が滑稽で仕方ないんだよ!!」


不意に響く笑い声に思わず回りで殺りあっていた奴らもこちらに視線を向け静まり返る。


「…私が、何を知らないって…?」


克の言葉に訝し気な顔をしながら聞けば俯いていた顔を上げ克と視線が交わる。


「……ッッ…」


"恐ろしい"

目があった瞬間、ただその言葉だけが頭を過ぎり背筋が凍りつく。


「……母親が、死んだ時の事覚えてるか?」


克の言葉の意味が分からず、眉間に皴を寄せたまま頷けば笑みを浮かべ口を開く克。


――…母親が死んだのは事故。
何故、いきなりその話なんか…


そこまで思いハッとし克を睨みつける。


「……まさか、お前が…ッ」


自分でも驚く程の低い声で言えば何が可笑しいのか更に笑みを浮かべ「あぁ」と言い立ち上がる克。


「…おい、蓮南、どういう事だ?」


話が分からないのか肩を叩きながら問う大雅に視線だけを動かし克を睨みつけながら口を開く。


「…こいつが…母さんを殺したんだよッ!!」


そう言えば大雅の表情は険しいものへと変わっていく。


「…そうだよ、俺が殺したんだよ。お前が憎くて仕方なかった…俺を認めてくれない奴らも憎かった……だから殺したんだよ」


そう言えば声高らかに笑う克をただ何もせず視界に捉えていた。