「…塁?」


裕香の挨拶周りに付き添っていれば見慣れた顔に視線を止める。


「……蓮南?」


向こうも気付いたのか一緒にいた外人に軽く会釈をしこちらに向かってくる塁。


「…あっ、仕事の?」

「んー…、まあそんな感じ」

「でも、あれって確か波留の…」

そこまで言い視線をこちらに気付いていない裕香へと移す。


「…そう、護衛の依頼」

「へえ…大変だね。それと…昨日は恵都がごめんね…」


申し訳なさそうに眉を下げ謝る塁に軽く微笑み口を開く。


「…別に塁が悪い訳じゃないし…対して怒ってもないから」

「そっか…あっ、戻らなきゃいけないみたいだから…また明日」

「……ッッ…また、明日…」


何かを決意したように微笑みながら塁が言った言葉に一瞬目を見開き言葉を続ける。


……明日、ようやく克との決着。
塁が決意をしている事が嬉しい反面、何かあった最悪の事態……それを考え表情を曇らせる。



ふぅ、と息を吐き出せば頬をパチンっと軽く叩く。


「…よし、大丈夫…」


切り替えるように呟けば一度瞼をそっ、と閉じる。


……大丈夫、皆は私を信じてくれている。なら…私だって皆を心から信用しなきゃいけない。


未だ不安な気持ちはあるものの先程よりは無くなったと思いすっ、と息を吸い裕香の元へと戻る。



「…殿内さんは…?」

「え?惇ならあそこよ」

「…執事もやるんだ」

「人にもよるけどね、惇は割と社交的だし好かれやすいから」


少し離れた所で外人達と談笑する殿内に視線を移して幸せそうに話す裕香。